先の政権交代のとき

お久しぶりです。 Acadexit して、一年ほどが経ちましたが私は元気です。 アカデミアにいたころは、アカデミア外で働く自分を想像するのは難しかったのですが、意外とやればなんとかなるものですね。 アカデミア生活で身についた有形無形のスキルは意外と民…

味噌汁はお肌に良いという論文

先日、近所のスーパーで「味噌汁はお肌に良い」というキャッチフレーズで特売をしているのに出くわした。 何を適当なことを、と売り場のポップをジロジロ見ていると、どうもきちんと研究があるようだ。家に帰って調べてみると、どうやらこれのようである。 …

研究、やめました

なかなか踏ん切りがつかず、この年までズルズルと研究業界にしがみついてきましたが、ついにこの春に研究職を離れました。理由はいろいろあるのですが、やはり年々低下する意欲と厳しくなる経済状況、そしてもうそろそろポジションを得ることが現実的に難し…

任期切れの足音

今年度も3分の1が終わろうとしている。 僕にとって、今年は契約最終年。いわゆる「任期切れの年」だ。 今や若手にとって当たり前になった「任期〇年」のポジション(〇は通常1以上5未満)。アカデミアにいる同年代の友人達も、多くが任期付きだ。 30代も半ば…

ギフトオーサーシップという踏み絵

悩んでいる。 実利をとるのか自分の信念をとるのかを - - - - ちょうど今の所属ラボでやった仕事が切りのいいところでまとまったので、論文化するという話になった。もちろん僕は大歓迎で論文を書き進めているわけだが、先週コレスポのボスからとある打診(…

そんなに「グローバルリーダー」は必要か?

ここ数年、アカデミックの世界(というか大学をはじめとする研究組織)にいると頻繁に目にするようになった単語に「グローバルリーダー」がある。要は、世界で活躍できる組織牽引型の人材のことなのだろうが、最近はどこの大学も金太郎飴がごとくこの単語を…

ポスドクのお給料

アカデミアにいるとなかなか聞けないハナシの一つに「お給料」の話がある。常勤の教員/スタッフであれば、国公立大か私立大か、都市大か地方大かで、大体の「相場」が知られているし、その組織の給与規定が明示されている。しかし一方で、ポスドクの懐事情は…

情熱が消えるとき

数少ない大学の同期でアカデミアへ進んだ友人が、アカデミアを去った。稀代の天才、とまではいかないものの、真摯に実験に取り組み、着々と手堅いいい仕事を論文として世に出して行く切れ者だった。何より彼には研究に対する人一倍の情熱があった。「俺は今…

「君のテーマは面白い」

新学期、今年も新しい学生さんが研究室に入ってくる季節。 毎年毎年、僕は新しく研究室に入った学生さんに言い続けていることがある。「君のテーマは面白い」 - - - - - - かつて在籍した研究室での話。その研究室は、「テーマは学生に『与える』ものであっ…

国は小保方さんを護るべきか?後編

国は小保方晴子さんを護れ!酷いブログ記事なんだが、強い意志できちんと反論することの意義はあるに違いないと言い聞かせて後半も書く。(国は小保方さんを護るべきか?前編) リンク先ブログより引用--- 追いつめられた小保方さんが、そのノートを公開すれ…

国は小保方さんを護るべきか?

この騒動で一番酷い意見を見つけました。国は小保方晴子さんを護れ!多くの研究者はこのブログ記事を黙殺するでしょうう。 言及に値しないほど酷いものだから。 しかし、賛同・同意する方々の多さに背筋が凍るものがあります。これは少しでも問題点を指摘し…

「STAP細胞の有無こそが重要だ」という皆さんへ

先日の某有名リケジョの会見はもしかしたら世論を変えるほどの一世一代の名会見だったのかもしれないと思うほど見事なものでした。実にあっぱれでした。あの涙を見て多くの視聴者がSTAP細胞の存在を信じ、彼女がトカゲのしっぽとして巨大な組織に切り捨てら…

問題点は複数ある

いよいよエンターテイメント化してきた例のSTAP騒動だが、本当にこの問題はいろいろな問題が絡み合って生じている。一義的に「誰々が悪い!」と断じるのは少し難しい。 個人的に主な問題は4つだと思う。1)データの捏造に対する責任 本人は「悪意がなかった…

悪いのは誰か。

例のSTAP騒動だが、諸悪の根源は筆頭著者の小保方氏ではないような気がしてきた。小保方氏はNatureのSTAP論文、早稲田の博士論文での不正に関して「(剽窃・画像流用などが)悪いことだと思わなかった」と述べている。研究者の常識的には考えがたいことでは…

不条理

すっかり業界のみならず巷でも話題になってしまったSTAP細胞。 画像流用は故意か過失かはまだ確定していないようだが、我々同業者からしたら言うまでもないこと。黒いも黒い、真っ黒である。理研会見 僕のようにポスドク歴が長い(≒なかなかポストが決まらず…

外野は引っ込んでろ

小保方晴子さんの「STAP細胞論文捏造疑惑」 アンチ勢力の陰今朝、この週刊誌記事を目にして怒りに震えた。「“捏造疑惑”について調査中であることを表明したことから、鬼の首を取ったような小保方バッシングが巻き起こっている。だが、冷静に論文を精査すれば…

ダメ、絶対

今月頭に世間の話題をさらったSTAP細胞が、早くも疑惑に揺れているようだ。 参考: 理研が調査を開始(毎日新聞)僕個人としては、STAP細胞の作製自体が捏造ということはないだろうと思っている。 この分野の注目度と研究者の数を考えれば、すぐに数多の研究者…

共著論文放置は罪

前にも言ったが、共著者から回ってきた論文原稿を放置することは誰の益にもならない。 むしろそれによって投稿までの時間がいたずらに長くなることを考えると罪、そう、罪でしかない。数週間レベルならともかく数ヶ月レベルで原稿を返さない共著者なんていう…

バッタ博士 前野ウルド浩太郎

帰って来たバッタ博士 前編 後編過去にもたびたび言及している前野氏だが、なんとプレジデント誌のオンラインサイトに特集記事が出ていた。無給PDとしてアフリカで研究する彼が、日本で最も競争的・理想的ポストの1つである京大・白眉プロジェクトに採用さ…

学部の間は友達作れ 

先日、ラボに学部生の訪問があった。 配属は2年も先のことなのに熱心だなぁと思った程度だったのだが、なんやかやで対応係を命じられてしまった。 訪問してきた彼に聞くところによると、彼はかなり強く研究者を志望しているそうだ。しかし、特に特定の分野…

こうはなりたくない PI チェックリスト

□ 院生・PDに物事を頼むときは命令口調だ□ 自分の行いは頻繁に棚にあげる□ ラボのOB/OG が遊びに来ることなんてない□ 面と向かって院生やPDが自分に意見することはない□ 自分の経験談はみんな聞きたがるだろう□ 自分が一次会で帰ると、二次会は盛り上がるよ…

権威主義的研究室

今年の分子生物学会では「偉い先生の顔に落書きをする」という企画が行われるようだ。一見、安っぽいバラエティ番組かのような企画だが、上記リンクにも書いてある通り、日本の多くの研究室は封建的で研究室内のヒエラルキーがはっきりしている。 PIが白とい…

ランナーを出してもホームに還さないと意味がない

基本的に実験生物学の世界では、データがなければ論文は書けない。 いや、生命科学に限らず、実験ベースの分野ならどこでもだいたい一緒だろう。総説やプロポーザル論文以外の原著論文は、普通何らかの実験データを含んでいるものである。だからこそPDは朝か…

正しくやっている人は、正しく評価される。

先日、京都大学白眉センターの公募結果発表があった。以前このブログでも言及したバッタ博士こと前野博士が採用されている。 オンリーワンPDである彼が、こうして評価され、収入も地位もある職につくのを見ると、まだまだこの国のアカデミアは「正しくやって…

ダメな同僚

学会シーズンということもあり3ヶ月も空いてしまった。先日学会で久しぶりにかつての同僚だったPDを見かけた。 少しばかり思い出すところがあったので、その話をしようかと思う。 - - - - - - 彼と同じラボで仕事をしたのは数年前の1年間ほど。 ラボから…

ブラック研究室の条件とは?

ブラック企業大賞とやらに東北大学がエントリーされたと話題になっているようだ。 http://blackcorpaward.blogspot.com/ウェブ上に実際のOBの方の文章も見つけた。是非一読していただきたい。 http://anond.hatelabo.jp/20130705220752"しかし、そのブラック…

オンリーワンPD

ネット上でいくつか贔屓にさせていただいているブログがある。 その中のひとつ、「砂漠のリアルムシキング」について書いてみたい。 Web上では有名な方のようだが、このブログの筆者もまたPD(ポスドク)である。僕と分野は違えど、置かれている社会的地位は…

学振の添削に関する所感

学振申請のこの季節。 今でこそしがないPDをやっている僕も、かつては各種学振の恩恵に預かっていたこともある。申請書作成にはそこそこのノウハウを持っている。 (逆に今こうやってパッとしないPDをやっているという事は、僕にあったのはノウハウだけで実…

ラボのデスクにプライバシーはあるか

新年度となり、居室の平均年齢がガクっと下がる季節である。 1人、平均年齢を上げるだけの存在になってしまったわが身を省みつつ過ごす今日この頃。先日、早速新しい院生が「デスクに私物を置いてもいいか」と尋ねて来た。 今日び、わざわざそんなことを尋ね…

自慢話のリスク

PD生活も長くなれば、同僚に「自慢屋」がいた経験も豊富になるし、学会での知り合いが増えれば否が応でも「自慢屋」に出くわす。僕は性格が原因か、立場が原因かわからないが(両方なのではないかと予想している)、自慢話を聞く機会がとても多い。自慢話を…