研究、やめました

なかなか踏ん切りがつかず、この年までズルズルと研究業界にしがみついてきましたが、ついにこの春に研究職を離れました。

理由はいろいろあるのですが、やはり年々低下する意欲と厳しくなる経済状況、そしてもうそろそろポジションを得ることが現実的に難しいと判断したからです。

研究者として私の最後の数年は抜け殻のようなものでした。
常に任期更新の有無に気をもみ、公募に落ちるたびに、今こうしてやっている目の前の実験や申請書書きになんの意味があるのか、と自問自答する日々の中、新たな技術や別分野の勉強をする意欲はどんどん失せていきました。
ただ、実験をこなす、ただ、データをまとめる。そこに、かつて自分が見出していた知的興奮などはありません。本当に、ただの抜け殻でした。

そんな能力も実績も成長意欲もない人間がいつまでも業界に残れるほど甘い世界ではないことも承知しています。また、そんな人間がなにかの間違いで限られた席を埋めてしまうことは、未来の有望な若者の席を奪うことにもつながりかねません。
その判断力が残っているうちに決心しました。

日の当たらない研究生活を這うように続けてきましたが、こうしていざ離れることを決意すると、アカデミアはとても楽しいところでもありました。
。同僚と実験結果について議論し、論文を書き、たとえ小さな一歩でも、人類の知識の上積みに貢献することは、喜び以外の何物でもありませんでした。

いつまでもこの業界に居たかった。
けれど、それはもう過去のことです。



コノヨノカガクニサチアレ