ダメな同僚

学会シーズンということもあり3ヶ月も空いてしまった。

先日学会で久しぶりにかつての同僚だったPDを見かけた。
少しばかり思い出すところがあったので、その話をしようかと思う。

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彼と同じラボで仕事をしたのは数年前の1年間ほど。
ラボからPDの急募が出たときに応募してきたのが彼だった。
人当たりは悪くなく、一通り専門技術は身に付けている。業績欄こそやや寂しい印象があったものの、当時のボスはそれほど悩むことなく彼を採用し、中規模のプロジェクトを彼に任せた。

だが、ラボに在籍していた1年間、彼はほとんどデータを出さなかった。実験作業自体は(熱心とは言いがたいが)やっているものの、研究の目的を理解していないのは明白で、全くの見当違いなことを繰り返してはサンプルも試薬も無駄に浪費していた。ボスはしばらくは彼の能力の低さに気付いていなかったが、定期報告会で彼が全く意味のあるデータを出していないことに気付くと、定期的に彼とミーティングを持ち、なんとか真っ当に仕事をするよう促した。

担当プロジェクトが別ということもあり、さして親しくしていたわけではないが、時には彼と飯を食いに行く機会もあった。幾度となく、それとはなしにもっと目的に向かってデータを取ったほうがいい、ネットサーフィンばかりしてないでもっと実験した方がいい、とは言うものの、そういう話題になると彼は決まって不機嫌になり、いずれアカデミアから去るからいいんだと言い訳がましく話を閉めた。

結局彼はなんら変わることなく、その後もラボでネットサーフィンに興じる傍ら、時折なんら意味のないデータを出す日々を続けていた。翌年、予想通り契約更改されることなく彼はクビになりラボを去った。

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「いずれアカデミアを去る」と言いながら、未だに学会に出ているということは、まだどこかでPDをやっているのだろう。あれから数年、すでに30も半ばを過ぎようかという年齢になり、民間就職も公務員試験もほとんど不可能だろう。もはや、彼が「アカデミアから去る」というのは無職フリーターになると同義である。

一緒に仕事をしていたとき、彼は厳しいことを言われるのを嫌い、苦言を呈されても考えを改める様子もなかったので自業自得といえばそれまでではあるが、あのような"ダメ"な同僚にはどう接するのが正解だったのだろうか、将来PIになったときに彼のようなハズレPDを引いたときにどうすれば良いのだろうか、と考えることはある。

皆さんは、そういう時どうしているのだろうか?
やはり放っておくのが最善なんだろうか。



余談だが、彼の後任のPDは、彼が1年かけて出したのとほぼ同じ量のデータを着任後1ヶ月も掛からずに出し、あっという間にそのプロジェクトは論文となり出版された。この経験が相当効いたようで、以降当時のボスはPDの雇用には非常に慎重になり、その後は次々に "当たりPD" を引き当て、業績を稼いでいる。