ブラック研究室の条件とは?

ブラック企業大賞とやらに東北大学がエントリーされたと話題になっているようだ。
http://blackcorpaward.blogspot.com/

ウェブ上に実際のOBの方の文章も見つけた。是非一読していただきたい。
http://anond.hatelabo.jp/20130705220752

"しかし、そのブラック研究室の労働環境は想像を絶する。土日も来るのは当たり前、深夜12時を回っても帰る学生がいない。つまり、週七日フルで働くわけだ。" (先のブログ記事より引用)

今回は話題のブラック研究室に付いて、、、



やはり、ブラック研究室の特徴として上げられるのは「労働時間の長さ」だろう。
記事で述べられている週七フルタイムの激烈な労働環境は、時折耳にする話である。

ただ、ハードワークそれ自体には、理系で院に進んだ人であれば、ある程度慣れ親しんだものかもしれない。この記事のラボほどではないかもしれないが、多かれ少なかれ、日本の数多のラボでは、院生を昼夜「働かせている」。

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院生とは、日本社会の「タダ働きエリート」と言っても過言ではない。
どんなブラック企業だろうと、労働者が完全に無給という企業はそうそうないだろう。ところが、院生はタダ働きどころか、使役者側に年間数十万に及ぶ授業料を納めてすらいるのだ。

もちろん、彼らは研究室において「教育を受けている」。
実際に研究活動を行うのは、「研究」を学ぶ上で何よりの教育であることに疑いの余地は無い。

ところがである、彼らは教育を受けているだけではなく、研究活動に貢献もしている。
この「貢献の有無」は高校生や学部生などの他の学生とは根本的に異なる。

日本の研究機関(特に大学)から発表される年間10万本に及ぶ論文の多くは、院生の働きに支えられていると言っても過言ではない(もちろんPDに支えられる部分も大きいが、彼らは一応給料という「対価」を得ている)。
もし、日本から院生が全て消えてしまったら、発表論文数は激減するだろうし、多くのラボは再起不能にすら陥るかもしれない。地方国立大はもとより、旧帝クラスでも、研究室の主力は「修士・博士の院生」という研究室は決して珍しくない。いや、むしろ多数派ではないかとすら思われる。

そう、本来ならば院生は給料をもらっても良いくらいの立場である。
(事実、アメリカの大学では多くの院生は給料をもらっている。出所は多様で外部フェローシップの他、大学、学科、そしてもちろんPIの研究費のこともある)。

だから、そもそも事実(給料の有無/貢献の有無) だけを見れば「日本の大学院生」と言うのはとんでもないブラック職なのである。


とはいえ、多くの院生は充実した研究生活を送っているのも事実。そして、その貢献度にはこれまた大きな個人差が存在するため、一律に「貢献しているから給料だせ」と言うことは出来ない。
今の日本のシステムで、全ての院生に給料を出せと言うのもまた無理な話である(理想的には、選抜を強化して有給化すべきだとは思うが)。

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ついつい、つらつらと書き連ねてしまって肝心の「ブラック研究室」まで話が到達しなかった。これに付いてはまた後日に後編を、としたい。

なお一言だけいうならば、個人的に研究室がブラックかそうでないかを分けるのは「罵倒の有無」だと思っている。

労働時間の有無が絶対的な条件ではない。
もう一度言う、院生の心を、人格を、将来を、人生を、壊すのは「罵倒」だと思っている。